北海道大学寮歌祭 資料

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明治四十三年寮歌
帝都を北に

谷村 愛之助君 作歌
柳沢 秀雄君 作曲


 帝都を北に三百里
 津軽の海を越え来れば
 紅塵絶えて空潔く
 蕭々として水寒し
 大陸の精鍾まりて
 我北州の島と凝る


 鯨群れ吼ゆる荒潮に
 落つる北斗の影冴えて
 斧鉞入らざるや森林や
 人跡絶えし大野原
 原始の儘の俤を
 我北州の島に見る


 鈴蘭薫る春の野辺
 楡の下蔭草繁る
 霜葉燃ゆる蔦葛
 吹雪は叫ぶ冬の夜半
 四季の変遷興添へて
 眺めは飽かぬ姿かな


 朝霧深き野の面に
 嘶く駒の跡追へば
 露の白玉散り乱る
 甘藍の畑たそがれて
 プラウの土を払ふ時
 農牧の幸謳ふかな


 見よ文明は北進す
 古嚢は盛らず新酒を
 新文明の建設は
 濁れる都にあらずして
 渺たる大河の片辺
 地は広漠の沖積層


 此聖都を永久に
 浮華軽佻の国とせず
 真摯素樸の郷となし
 我等が使命成し遂げん
 真理の秘奥深く可く
 道義の光照す可く


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